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cardiologist 2002年07月26日 08:52
まずキシさんの最初のご質問、A型肝炎が自然治癒するのかどうかについてですが、ウイルス性疾患に対する有効な治療法というのが、まだほとんどなく、B型肝炎とC型肝炎に対するインターフェロン療法と、ヘルペスに対する抗ウイルス剤と、インフルエンザウイルスに対する数年前から使用されつつある抗ウイルス剤くらいで、風邪をはじめとして、ウイルス感染症というのは、宿主(人間)側に抗体ができて初めて治癒するものであって、大抵は、対症療法のみです。A型肝炎に対しても、安静や絶食や輸液などの対症療法が行われていますが、細菌感染症に対するような病原菌に対する直接的な攻撃(対症療法の反対の、原因療法)がウイルスに対してはできませんので、すべてのA型肝炎は実は基本的には自然治癒といえます。

つぎにrikkiさんのひとつめのご質問7432ですが、プロバイオテッィクス、よくご存じですね。胃潰瘍の原因菌として五年前くらいから話題のピロリ菌に対して抗菌作用を持つLG21というヨーグルトが有名ですね。このLG21については、まだ確立された証拠はありませんし、おそらく除菌するほどの力まではないのではと思います。ただLG21はうまいので私は好きです。乳酸菌が、胃酸に耐えて、生きたまま大腸にまで到達するのかどうかについては、ヤクルトに関して、大昔に東大生協が不買運動を起こしたことがあったそうですが、カプセルに入った乳酸菌製剤などは、それに対する対策です。ただ、実際ヨーグルトや納豆やビオフェルミンなどの習慣的摂取によって、大腸に関する自覚症状が改善するのは日頃よく経験する事実ですし、おそらく細菌学的にも証明されているのではないかと思います。腸内細菌叢を善玉菌でできるだけ占めさせるというのは、大事なことだと思います。

納豆菌については、私自身納豆菌自体が腸内細菌叢で増えてくるものと理解してましたので、自分の腸内細菌叢の大半が納豆菌でしめられたりするというのは、なんとなく乳酸菌と比べると品がないようでいやだなと思ったりしてましたが(笑)、乳酸菌の発育を助けるような側面があるようです。この点については、勉強不足でこれ以上の知識はありません。

善玉菌が多いとなぜ、腸管感染症をおこしにくいかについてですが、キシさんのおっしゃるとおりでよいと思います。琵琶湖で、ブラックバスが増えたら、鮎やもろこやフナなどが減ったように、自然界には、環境に応じた定員みたいなものがあると考えてみたらよいと思います。限られた栄養とテリトリーから、人口密度(菌密度)の上限みたいなのがあって、善玉菌がおおければ、病原菌は繁殖する余地が少なくなるということだと思います。

キムチについては、rikkiさんのご指摘のとおりで、日本のキムチはいいかげんなものも多いようですが、韓国のキムチは発酵食品ですので、たしか生きた乳酸菌がいると思います。韓国でO157の大流行がないのは、このおかげではないかというのを何かで呼んだことがあります。ただし、これは確かな根拠はないかもしれません。キムチにはこのほか、カプサイシンが多く含まれていて、ダイエットに有効なので韓国人には肥満者はすくないという、これも面白いけど、evidenceはないかもしれない話も聞いたことあります。更に付け加えれば、唐辛子にはビタミンCも多く含まれていて、昔の航海などで壊血病の予防において、貴重で安定した(腐りにくい)ビタミンC源として、珍重されたそうです。あっ余談が多くてすみません。

それからrikkiさんの、7439についてですが、「抗生剤は一週間ぐらいは服用しないと効果が得られない」というのは、既に細菌感染症を発症してる場合の話ですね。予防ですから、すでに局所で繁殖してる菌をたたくのと違って、抗生物質の血中濃度あるいは組織中濃度を事前に上げておいて、侵入してきたまだ少量の菌の発育を阻止するだけでよいわけですので、服用開始は旅行当日朝からで十分です。抗生物質の種類につきましては、現在日常臨床で使用されているのは、おおかまにいって、ペニシリン系、セフェム、抗生物質とはちょっと違って、正式には抗菌剤に分類されるものがあります。このニューキノロンが、腸管感染症のホープでして、赤痢でもコレラでも、病原性大腸菌でも、サルモネラでも友好な、万能に近い薬剤です。強力すぎて、正常腸内細菌叢を破壊してしまって却って下痢するなんてこともありますので、治療に必要な量よりも、予防的投与については少量でもいいのではと思います(一日3錠のものを2錠程度で)。代表的銘柄としては、第一製薬のクラビットだとか、昨年の炭疽菌騒ぎで有名になったバイエルのシプロキサンなどが知られています。クラミジアや淋菌などの性感染症にも有効で、キシさんなどはひょっとしたら重宝されるかもしれません?いやこれは冗談です。

副作用は下痢か胃炎くらい、ごくまれに肝障害がないでもないというくらいですが、安全な薬です。

それから、美子さんのおっしゃるとおり、A型肝炎ウイルスの、知らない間の、すなわち不顕性感染による抗体陽性化も多く、日本人については、具体的数値は忘れましたが、高齢者はかなりの率で抗体陽性です。ある意味、不衛生な食生活に鍛えられてきたわけです。若年層ほど、抗体陽性率はさがります。また東南アジアにおいては、抗体陽性率は高いです。同じことが、胃潰瘍原因菌とされるピロリ菌にもいえます。これらの陽性率は不衛生さのバロメーターでもありますが、陽性率の低い若年層は、細菌学的に、いわば箱入り娘というか世間知らずなので、腸管感染症に弱いといえます。キシさんは症状があったわけなので、不顕性感染ではなかったわけです。

なんだかベトナムゴーのノリと違うことを書いてるようで、恐縮です。

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